愛するあなたを殺させないため、死に戻った私はこの恋を捨てると決めた
 ザカリアスが口にした名前に、エリシアの胸がどくりと音を立てる。ロジェリオからこんな贈り物が届くなんて、前回はなかった。また会いたいと言われたのを断ったのがよくなかったのだろうか。
 その場で固まってしまったエリシアの顔を、ザカリアスは怪訝そうに見つめる。
「昨晩の夜会で、お会いになったのですか? 随分と立派な花束ですが」
「そ、そうね……。ほんの少しお話をしただけだし、こんなものをいただくような関係ではないのだけど。花は、どこか日当たりのいい場所に飾ってちょうだい」
「お嬢様のお部屋に飾らなくていいのですか?」
「えぇ、構わないわ。風邪の後遺症なのか、あまり濃い香りを嗅ぐと気分が悪くなってしまうから」
 言い訳のようにそう言うと、ザカリアスは少し不思議そうにしながらも分かりましたとうなずいた。
「それから、お父様にはこのことは黙っていて。本当に、何もなかったの」
「ですが」
「お願い。お父様が知ったら、公爵家と縁を結べるかもしれないってきっと乗り気になってしまうわ。先方にそんなつもりがないことは、昨晩お会いした私が一番よく分かっているの」
「分かりました。お嬢様がそこまでおっしゃるのなら」
 必死なエリシアの様子に何か思うところはある様子だったが、ザカリアスは黙っておくと約束してくれた。
「約束よ。絶対に、秘密にしてね」
 そう念押しをして、エリシアはくるりと踵を返し、自室へ戻った。
 部屋の中で一人きりになって、エリシアは胸に抱きしめた手紙へ視線を落とす。高級感のある箔押しの封筒に記された文字を見るだけで、ぐっと胸が苦しくなるほど懐かしくなる。少し角ばったロジェリオの字だ。かつては文通を繰り返し、エリシアの宝石箱の中には彼からもらった手紙が何通も大切に収められていた。
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