愛するあなたを殺させないため、死に戻った私はこの恋を捨てると決めた
「私たちは婚約をして、結婚式を控えていて……。そして……ある日、あなたは……っ」
 言葉にしようとするものの、声が出ない。唇どころか全身が震えて、血の気が引いていく。
 あの雨の日、真っ赤な血を吐いて倒れたロジェリオの苦悶の表情。どんなに叫んでも握り返してくれることのなかった、冷たい手。
 あなたは殺されるのだと、ロジェリオに伝えるのが恐ろしい。口にすれば、それが本当のことになってしまいそうだから。
「……っやっぱり、言えない……。怖いの」
「何を聞いても俺は平気だ。だから、教えて」
 喘ぐような呼吸を繰り返すエリシアの手を、ロジェリオが握りしめた。あの忌まわしい記憶の中とは違う、あたたかな手。そのぬくもりに縋るように、エリシアは彼の手を握り返した。
 そして、ごくりと唾を飲み込んでロジェリオをじっと見上げた。
「っ、あなたは、毒によって……命を落としました。……殺されたの」
 ほとんど吐息のような声で伝えた言葉は、彼にも届いたようだ。信じられないといった様子で硬直するロジェリオから視線を逸らして、エリシアはうつむいた。ぼろぼろとこぼれ落ちる涙が、ドレスにいくつもの染みを作っていく。
「私は何もできなくて……ただ泣いていることしか……っ」
 絶望の中、泣き叫んでいたことを思い出して、エリシアはひきつった声をあげる。
 呼吸はどんどん速くなり、息を吸っても苦しさは増す一方だ。
「私……私の、せいで……っ」
 悲鳴のような声でそう言ったエリシアの身体を、ロジェリオが強く抱きしめた。優しく背中を撫でる手は、エリシアに大丈夫だと言ってくれているようだ。
「きみのせいじゃない。自分を責めないでくれ」
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