愛するあなたを殺させないため、死に戻った私はこの恋を捨てると決めた
「恐ろしい思いをしたんだな、エリシア。守ってやれなくて、すまない」
 手で口元を覆うエリシアを、ロジェリオは優しく抱き寄せてくれた。彼のせいではないと言いたいのに、しゃくりあげて言葉にならない。
 優しい声で名を呼ばれ、エリシアは震える手を彼の背に回して抱きついた。恐ろしい記憶は頭の中から消えないけれど、彼のぬくもりを感じていたら、ほんの少しだけ恐怖が薄れていくようだ。
「私……、私も、あとを追ったの。『彼』のものになるくらいなら、死んだほうがましだと思って」
 震える声で告げると、抱きしめる腕の力が更に強くなった。ロジェリオの苦しげな吐息が、耳元にかかる。
「あなたの――ロジェリオの飲んでいたカップの破片を胸に刺して……。確かに死んだと思ったのに、気づいたら十九の誕生日の直前に戻っていたの」
「っ、エリシア……」
 ほとんど吐息だけの彼の声も、震えている。顔は見えないけれど、彼も泣いているような気がした。
「辛い話をさせて、すまない。こんなにも恐ろしい記憶を抱えて、きみは……」
「きっと私が死に戻ったのは、あなたを守るため。私と婚約をしなければ、殺されることはないもの。だから……」
「それは違う。絶対に違う、エリシア」
 強い口調で言って、ロジェリオはエリシアの顔をのぞき込んだ。その目は、怖いほどに真剣だ。
「エリシアが俺を守るために距離を置こうとしてくれたというのは、よく分かった。だけど俺を殺したその男は、今もきみに歪んだ想いを抱いているかもしれない。たとえ俺との婚約を回避したところで、きみの身は守れない」
「それは……」
< 72 / 152 >

この作品をシェア

pagetop