愛するあなたを殺させないため、死に戻った私はこの恋を捨てると決めた
強く拳を握りしめて、ヴィクトルはうつむく。
「姉さんの行動が、記憶の中と違っていることには気づいていた。夜会に行きたがらなかったり、ドレスが違ったりしたから。だけど何故前回と違うのか、そもそも何がきっかけであんなことが起きたのかも分からなくて、どうしたらいいのか見当もつかなかった。でもさっきの反応を見て、姉さんもきっとおれと同じだと思ったんだ。あの劇は……姉さんたちが死んだ日に、父さんと母さんが観に行っていたものだったから」
ヴィクトルは、震える声でそう吐き出す。エリシアは思わず立ち上がり、弟の手を握りしめた。お互いの手はぶるぶると震えていたけれど、同じ記憶を持っているという深い絆を感じるような気がした。
エリシアはヴィクトルの隣に座り直し、ゆっくりと口を開く。
「ロジェリオは……殺されたのよ。紅茶に毒を盛られて……」
「毒……?」
「私は、誰がロジェリオを殺したのか覚えていなかったの。分かっていたのは、家族のように思っていた相手だということだけ。私にとってそれは、ヴィクトルか……ザカリアスしかいなかった」
その名前を口にするだけで、身体が震える。信頼できる執事だと思っていたのに、兄のように優しい人だったのに、彼はロジェリオだけでなくヴィクトルのことも殺した。
予想外の名前だったのか、弟も目を見開いて息をのむ。
「ザカリアス……どうしてあいつが」
「私と愛し合っていると……そう思い込んでいたの。絶対にそんなこと、ありえないのに」
忌まわしい記憶の中の顔が鮮明になり、ザカリアスの姿を取る。熱を帯びたまなざしを向けられたこと、湿った手で腕を掴まれたこと――。
「姉さんの行動が、記憶の中と違っていることには気づいていた。夜会に行きたがらなかったり、ドレスが違ったりしたから。だけど何故前回と違うのか、そもそも何がきっかけであんなことが起きたのかも分からなくて、どうしたらいいのか見当もつかなかった。でもさっきの反応を見て、姉さんもきっとおれと同じだと思ったんだ。あの劇は……姉さんたちが死んだ日に、父さんと母さんが観に行っていたものだったから」
ヴィクトルは、震える声でそう吐き出す。エリシアは思わず立ち上がり、弟の手を握りしめた。お互いの手はぶるぶると震えていたけれど、同じ記憶を持っているという深い絆を感じるような気がした。
エリシアはヴィクトルの隣に座り直し、ゆっくりと口を開く。
「ロジェリオは……殺されたのよ。紅茶に毒を盛られて……」
「毒……?」
「私は、誰がロジェリオを殺したのか覚えていなかったの。分かっていたのは、家族のように思っていた相手だということだけ。私にとってそれは、ヴィクトルか……ザカリアスしかいなかった」
その名前を口にするだけで、身体が震える。信頼できる執事だと思っていたのに、兄のように優しい人だったのに、彼はロジェリオだけでなくヴィクトルのことも殺した。
予想外の名前だったのか、弟も目を見開いて息をのむ。
「ザカリアス……どうしてあいつが」
「私と愛し合っていると……そう思い込んでいたの。絶対にそんなこと、ありえないのに」
忌まわしい記憶の中の顔が鮮明になり、ザカリアスの姿を取る。熱を帯びたまなざしを向けられたこと、湿った手で腕を掴まれたこと――。