愛するあなたを殺させないため、死に戻った私はこの恋を捨てると決めた
 急激な吐き気を催して、エリシアは低く呻いて口元を覆った。エリシアを気遣う様子を見せながら、ヴィクトルは首を振る。
「そんな勘違いをするなんて、信じられない……」
「密かに愛し合う関係だから、周囲の目を欺くために私が仕方なく婚約したと思っていたのよ。望まない結婚をする私を救い出すためにって……そう言ってロジェリオを……っ」
 それ以上を口に出すことはできなかった。亡くなったロジェリオの顔が脳裏をよぎり、エリシアは悲鳴を堪えるために、強く唇を噛みしめる。身体はぶるぶると震えているけれど、必死に呼吸を整えて冷静になろうとする。
「ふ、二人だけで暮らそうって、私をどこかへ連れて行こうとしたわ。だから私は……っ、ザカリアスの手から逃れるために……」
「姉さん、それ以上言わなくていい」
 ヴィクトルは、震えるエリシアの手をそっと握ってくれた。そのぬくもりが嫌だと感じないことにホッとしながら、エリシアは深い息を吐いた。
「気づいたら私は、十九の誕生日の直前に戻っていたの。毒を盛ったのがどちらなのか分からなくて、だから私は二人を避けるしかなかった……」
 ヴィクトルに対しても、冷たい態度を取ってしまった。エリシアが小さく謝罪の言葉をつぶやくと、弟は謝る必要なんてないと首を振った。
「姉さんの身に起きたことを考えれば、そんなの当然だ。だけど、ザカリアスはいつから姉さんのことを狙っていたんだ……」
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