愛するあなたを殺させないため、死に戻った私はこの恋を捨てると決めた
 うなずいて、エリシアは再び本に手を伸ばした。熱い紅茶で身体があたたまったのか、気分もほぐれたような気がする。
 その時、部屋を出ようとしたダナがふと足を止めて振り返った。
「そういえば今日の紅茶、お嬢様の様子を心配したザカリアスさんが特別にブレンドしてくれたものなんですよ」
「え……っ」
「お嬢様がとっても喜んでいたと、ザカリアスさんに伝えておきますね。では、行ってまいります」
「え、待っ……」
 エリシアが呼び止める声に気づかなかったようで、ダナは部屋を出て行ってしまう。急に吐き気を覚えて、全身が寒くなり、エリシアは思わず口元を押さえた。信用している侍女のダナが淹れてくれてものだからと警戒していなかったのに、まさか茶葉をザカリアスが用意していたなんて。
 彼女に悪気はないことは分かる。ザカリアスは優秀で優しい執事として、使用人らにも信頼されているのだから。 
 飲んでしまった紅茶を今すぐに吐き出したい気持ちになり、エリシアは立ちあがろうとした。その時、何故か急激な眠気が襲ってきた。
「う……」
 視界が暗くなって、目を開けていられない。もしかして、あの茶葉に何か仕込まれていたのだろうか。
 ふらつく身体を叱咤して、エリシアは立ち上がると、よろめきながらドアへ向かう。誰かに助けを求めなければ。
 崩れ落ちそうになりながらも、なんとかたどり着いたドアを開けて、エリシアは部屋の外に顔を出した。
「誰か……」
「おや、お嬢様。どうされましたか?」
 すぐそばで聞こえたのは、ザカリアスの声。どうしてここにと思う間もなく、よろめいた身体を支えられる。肩を抱く手が気持ち悪くて、エリシアは小さく呻いた。
「やめ……て」
「体調が悪いのですか? お部屋に戻りましょう」
「ぃや……っ」
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