たとえ世界から「ごめん」が消えたって、
「何だこれ」
翌朝目が覚めると、部屋の机に一束の花が置かれていた。
「……ああ、弘也か」
そういえば昨日、店を出たあと、花屋を営む彼の家からこの花束をもらった。
紫色のヒヤシンス。
どうしてこの花なのか尋ねたが、実は彼もよくわからないけど何となく、なんていい加減な回答だった。
しかし彼が云うには、
「仲直りするならこれって昔から言われてるんだよまあ女は花が好きな生き物だから何でも大丈夫だって〜あっお代は次の飲み奢りでよろしく」
と。
いや、おかしいだろ。
句読点打てやコノヤロー。
酔いから醒めた今、冷静になって考える。
別れた男からいきなり花束を押し付けられ、ヨリを戻そう、なんて言われたら。
そのシーンを想像した途端、何とも言い難い気持ち悪さに苛まれた。
「重たい男だこと」
これはやっぱり弘也に返して、飲みの奢りは撤回して、彼女とはもう終わったんだからあきらめよう、と思って大学へ行くための支度を始めた。