魔力ゼロの悪役令嬢が 最強の魔女になれたのは、優しい魔王さまの嫁だから
10話
10話 受胎告知 セカンド デイ 残り2日。
Second DAY─セカンド デイ。
ゲームオーバーまで残り2日。
まだ、残暑の残る、初秋の夜。
虫の声も未だ止まず。
カリナ•オルデウスは自室のベットの上で、苦しい夢にうなされていた。
─カリナ•オルデウス。聞こえるか?
もうすぐ、お前の中の生命が、お前の宮に根づく頃だろう。そうすれはカリナ•オルデウス、お前は強大な魔力を持つ魔女に生まれ変わるだろう。
然るのち、いま一度、封魔の法陣へ訪れよ。
そうすれば自ずと未来も見えてこよう。
カリナ•オルデウス、我は待つ。
目を覚ますと、夜中の1時の鐘が、低く響いている。わたしは音もなく、身を起こすと、歩き始める。
こんな夜更けに出歩いていては、家人や召使に、みとがめられるだろう。しかし不思議とそのような心配は、心に浮かばず、ただ夢遊病のように裸足のまま、ひたひたと歩き続ける。
幾重にも、重ねて刻まれた、封魔の魔法陣。
その中心には封魔の呪術が刻まれた、魔鎖が千切れて打ち捨てられている。
魔王は─いない。何故だろうと、方陣の中で見回している。
─どうした。なにをぼんやりしている。
声をかけられて振り向くと、そこには魔王がいた。
屋敷の地下深く、魔力でできた13階層にもなる、石造りの広大な祭場。
封魔の法陣にたたずむ、わたしと、魔王。
短めのプラチナブランドの髪に白い肌。短髪の髪からのぞく、黒い下向きの羊のような角、これが彼を魔族たらしめる。
(余談だが、この角は強大な魔力を発揮する際、先鋭化し巨大化する。さらに魔力を増大させると、身体も巨大な黒竜に変身する。)
右耳には黒いイヤーカフ。真っ黒な装束に長いマント。手は黒い短めの手袋がはめられ、長いまつ毛の奥にある銀色の瞳は、なんだか怒っているみたい。
『背はわたしより高いけど、小柄…。
すこし…若いというか、……子供…?もしかして、わたしと変わらない?』
それでも魔王の顔は、恐ろしく整っており美しく、おとぎ話の王子様のように見えた。
ただ、首筋と手のひら、舌先に入れている、漆黒の法術のタトゥーがおとぎ話の王子様ではない事を物語っている。
「まさか、魔王様…ではないですよね。」
─我を見間違えるな。
魔王はカリナをとがめた。
『魔王様…なんと言うか、
失礼ながら、失礼ながら、
なんというか、
なんか……弱そう…。』
魔王にムキムキマッチョでがっちり大柄な、イメージを期待していた、わたしは、こころ密かに失望していた。
理想と現実のギャップにひとり絶望し、打ちひしがれていた。
『なんだか…思っていたのと違う…。』
こうして、わたしの魔王様の第一印象はなんとも振るわないものだった。