魔力ゼロの悪役令嬢が 最強の魔女になれたのは、優しい魔王さまの嫁だから

18話

18話 愛の真実



──後日。


「お久しぶりです王太后様。」


そう言ってカリナは、挨拶をした。


「ずっと待っていたのよ。
貴女がわたくしをほっておくから、わたくしはまた信じた人に裏切られたと、勘違いしちゃったじゃない。」


『王太后様は、素直でかわいい人なんだなぁ…。』


カリナはこの頃は、このおばあちゃまがとても可愛らしく、好ましく感じていた。


「長らくお(ひま)を頂いたのには、理由があります。とても、とても、素敵なプレゼントを用意するためです。」


カリナが窓を開けると、鳩がバサバサと部屋の中に入って来た。


鳥はひとまわり旋回(せんかい)すると、カリナの肩に止まった。


王太后は尋ねる。


「すごく、かわいいわ。それがわたくしへのプレゼント?」


「いえこの子は、古い塔に入った時に、(なつ)かれてしまいまして。それから、ずっとわたしから、離れないもので…」


「古い塔?」


「ええ、庭の(すみ)に立つあの塔でございます」


「王太后さまこの手紙を読んでいただけないでしょうか?」


カリナはそう言うと、古い手紙を王太后に手渡した。



{…王太子妃メアリーよ、怒っているんだね。もう戦争が始まってから、3か月になる。

それでも、片時も君を想わない日はないよ。
生きて帰れると良いが、そうもいかない戦況だ。

どうか、私が死んだら、新しい家族を迎えてくれ。それでも、私はいつまでも貴女を愛している。…。

愛を込めて、王太子リアン より}



「この筆跡…先国王陛下のもの!どうしてこんな手紙があるの⁈」


王太后が驚いて尋ねる。


「実はこの肩に止まらせた鳩は、伝書鳩なんです。」


カリナ•オルデウスは鳩の喉を、優しく撫でながらそれに答える。


「実はあの古塔のなかに、何百羽とこの子みたいな、迷い伝書鳩が、住みついていました。そして、」


カリナは言葉を続ける。


「どうも、歴代の伝書鳩たちもあの古塔に迷い込んで、住み着いてしまう、悪い(くせ)があったみたいなんです。


わたしが古塔を見つけて、鳩たちの巣のなかを探したところ、たくさんの読まれなかった手紙を発見したんです。」


カリナは塔の様子や手紙をこの様に続けた。


「大量の手紙は王印(おういん)も解かれず、ひっそりと鳩のフンの紛れて、積もっていました。


それを綺麗にして、ほとんどは判読不能(はんどくふのう)な物ばかりでしたが、奇跡的に読めるものか何通かありましたので。


その手紙の内容は、先国王陛下が常に王太后様を気遣う、愛のあるものばりでした。」


カリナは王太后様に、分かってもらいたい一心で、説明を続ける。


「王太后様。先国王陛下様は、はきっと王太后様を深く愛していらっしゃったと思います。」


カリナはここまで言うと、話を閉じた。


王太后は手紙を何度も読み返す。


王太后の手はブルブルと震え、やがて涙は頬を伝い落ちた。


「読めないけど…まだ手紙がたくさん見つかったのね。」


王太后は言葉を振り絞って、カリナに尋ねる。


「はい。読めないほど、破損がひどく、かなり汚いですが…。それでも保管してあります。」


王太后は言葉を続けて、懇願(こんがん)する。


「それをちょうだい。みんなわたくしに、みんな渡して、ちょうだい!」


カリナは少し、戸惑(とまど)って念をおす。


「かなり汚くて、かなり、においも…ありますが。」


王太后は、ほっと笑みを浮かべる。


「それでもいいの。それは、わたくしのよ。返してちょうだい!」


王太后はそう言うと、愛おしそうに手紙を胸に抱いた。


庭のすみに、打ち捨てられた古い塔。その中に迷い伝書鳩が住み着いてしまった。


そのせいで、先国王が送った、王太后への手紙が届かなくなってしまった。


そのせいで、長い間、王太后様は先国王陛下に愛されていないと、恨みを募らせてしまう。


こんな話、誰が予測出来ただろう?
遅すぎる、知らせ。それでも…愛の真実が伝わってほんとうに良かった。


カリナ•オルデウスはしみじみ考えていた。




─後日、カリナに王太后から手紙が届く。


{この前は素晴らしい贈り物をありがとう。


おかげで、長い長い、わたくしのわだかまりが消えていったわ。


一番知りたかったことは最後にしか分からなかった。


この後悔は、最後まで愛を信じられなかった、わたくしの弱さが招いたものね。


…愛を信じなければ、何もはじまらないのに…。


わたくしが怒りで心を(かた)くしているうちに、たくさんいた、お友達はみんな離れていってしまいました。


だから、とても寂しい時間を長く過ごしたの。

そのせいで、カリナに対して、ずいぶん風変(ふうが)わりな行動をとってしまったわね。ごめんなさいね。


でももう大丈夫。心配はいらないわ。


カリナ•オルデウス、歳はずいぶん離れているけれど、どうかわたくしと友達でいて下さい。

それと、手紙と一緒に、この箱を貴女に託します。}


添えられた箱には見たこともないような、大きな宝石のはまった、豪奢(ごうしゃ)な指輪が入っていた。


{この指輪はわたくしの婚約のため、先国王陛下が下さったものです。


ほんとうはもっと昔に、王妃の結婚の際に渡さなければいけなかったの。


でも愛されないと、スネていたわたくしは王妃に素直に渡す事が出来なかった。


このわたくしの宝物を彼女に渡してもらえるかしら?


愛をこめて。メアリー・アルスラヌス}


こうして、本来あるべきところにあるべき物が収まり、


晴れて、カリナは王太子妃候補の試験をパスする事が出来た。

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