魔力ゼロの悪役令嬢が 最強の魔女になれたのは、優しい魔王さまの嫁だから

25話

25話 やり返しかた


「一体、この瓦礫(がれき)の山は、どういう事態なの?」


そう言いながら、王太后メアリーがこちらにやって来る。


地面に倒れた、聖女ローレライを、カエルの礫死体(れきしたい)でもみるように見た。


「聖女というより、どうみても魔女ね」


「こんな女にたぶらかされて、カリナを断罪(だんざい)するなんて…」


「王太后メアリーさま!」


一部始終を見ていた、野次馬(やじうま)たちは、


急な王太后の登場に、驚きを隠せない。


どうやら、人が集まってきた。それを察し、魔王はスッと姿を消した。


「顔をみればどちらが、信用できるかわかるでしょうに。」


「わたくし、王太后メアリー•アルスラヌスの名に()いて、カリナ•オルデウスにかけられた、冤罪(えんざい)を解きます!」


王太后メアリーは高らかに宣言する。


「王太后メアリー、この国の国母(こくぼ)として、わたくしは、未だ多くの国民に(した)われています。そして私が、まだこの国の主人のはずです。」


国王も王太子リアルも、この現場に連れてこられていた。


「王太子リアル、お前は王位継承権の剥奪(はくだつ)を命じます。

しかるのち、弟のリアムが王位を継ぐでしょう。」


そう言われた、王太子リアルは、ガックリとうなだれた。


「クソっ…」


そう言って(こぶし)をにぎった。


「それから、」


国王はぎくりとする。


「今まで、国王に預けていた、さまざまな、権威(けんい)は全て、一旦(いったん)わたくしに返していただきます。」


国王はそう言い渡されると、うなだれた。


そして、王太后メアリーはカリナに向き直る。


「カリナ、貴女にとても酷いことをしてしまいましたね。この国の王太后として謝らせて下さい。

この事態は、私の招いたもの。散財で国庫を枯渇(こかつ)させてしまった私の罪なのです。」


そう言って、カリナに謝罪した。


「ホントに後悔し尽くせないわ。とても弟の王太子に嫁いでくれとは、言えません。

でも貴女にも色々な事情があると思うけど、それらはこの国の王太后として全ての障害から守ります。

ですから、この国に末永く(とど)まっていただくことは出来ないかしら?」


カリナは首を振ると、申し訳無さそうに答えた。


「ごめんなさい。わたしは出て行きます。」


「そうですね。そう言うと思っていました。」


「わたくしは、また大事な人を失うのね。」


そして、カリナは気になっていた事を尋ねた。


「聖女ローレライはこれから、どうなるのですか?」


「この女の悪事はあとあと、調査して明らかにします。どうも3年前、養女になった素性(すじょう)の知れぬ、女のようです。」


「引き留めたく無いので、カリナこの辺でお別れをするわ。

わたくしと、お友達になってくれてありがとう。

貴女のような素晴らしい友は、もうこれから…老い先短い、わたくしには、現れないかもしれないわね。」


カリナも王太后メアリーと、別れの挨拶をした。もう会えない、別離(べつり)(じょう)として2人はハグをして別れた。


後ろ髪をひかれつつ、カリナは魔王の待つ、街外れへ向かう。


本当に、約束の場所に…、魔王様はいるのだろうか?


『どうしよう…。』


カリナは急に不安になり、足早に向かう。


『…魔王様…わたしを置いていかないで…。


ひとりにしないで…


お願い…。』


カリナの息は上がり、髪は乱れ、街外(まちはず)れに続く小道を、一心に駆けていく。


街外(まちはず)れの小高い丘に、一本の木が立っている。

その下に、魔王は腕を組みつつ、カリナを待っていた。


一羽の白い鳩がふたりの後を追い、蒼穹(そうきゅう)の空に消えた。
 
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