魔力ゼロの悪役令嬢が 最強の魔女になれたのは、優しい魔王さまの嫁だから
7話 2度目の死
7.話 2度目の死
オルデウス家の地下13階層の下に古代の魔王が封印されている。
そして今、わたし、カリナ・オルデウスにより封印は破られるのだ。
家宝─業魔の指輪、廻天の腕輪、宝珠の首環…わたしはオルデウス家に眠るありったけの魔法強化の宝玉を、秘密裏に持ち去ってきた。
これで、これだけで、少ない魔力を底上げし、どうにか魔王と繋がらなくてはいけない。
わたしは必死に、魔王に訴えかける。
「──どうか貴方様の、、魔王様の尊い血統を我が身に受け賜らせてください。どうか、、貴方様の子を孕む事をお許し下さい。」
カリナはほとんど、神に祈るように懇願した。
「そうなれば、受け取った生命の魔力により、ここにある強力な封魔の法陣を破り、貴方様を自由の身にする事もかないましょう。」
魔王はしばらく何も答えず、苦しい沈黙だけが場を支配した。
──去れと言ったはずだ。人間のごときが、我の運命に干渉するな。
これが、魔王の答えだった。
わたしはそれでもと食い下がる。
瞬間、カリナはビリつく魔力の圧を感じ取った。それは魔王から発せられた、鋭い殺意だった。
「えっ」
その声と共に、地面にぽとりとカリナの指が落ちた。
カリナは本能的に、驚いて手を見ると、今度は手首が落ちた。次に腕が消え、肩ごと首を切り落とされた。
それらは高速で斬られた様な、鋭い斬撃だった。
魔王は真空の法術でカリナを害し、カリナの四肢はずたずたに切断されたのだった。
そうして、
魔王は嘲笑するように言い放つ。
─我と取引など可能だと思ったのか?所詮、人間の浅知恵。自らの愚かさを呪うがいい。
カリナの身体は地面に倒れ込み、一瞬、自分の身に何が起こったのか分からない。
横倒しになったカリナの身体から、広がる鮮血。視界が徐々に赤く染まる。
床に広がる血溜まりがカリナの頬を浸し、生温かく濡らしてゆく。
『……何?何が起こったの?』
今のわたしには、輪環の腕輪はもう無い…。きっと二度と復活は出来ないだろう。
「わたし死ぬ……の?」
どうしよう……選択を間違えた。やっぱり魔王相手に交渉なんて出来るわけなかったんだ。
次第に、身体が痙攣しはじめ、力が入らない。
『だれか…たす…けて。……?、ん、、何か……今、見えたような?』
『何か……今、思い出したような。』
『見たことない、はずの映像が見えたような……。』
カリナは死の間際、走馬灯のような短い夢を見た。
今際の際で、何か、、を思い出した。でも、もう声も出せない……。
「モトノ、…セカイ、キオク。……ケィ……タイ…ィ…ハ……?」
この、カリナの呟きを魔王は聞き逃さなかった。
『─⁉︎……元の世界……だと!?』
魔王の動揺にカリナは気づかない。
「ココ……デモ、ミカタ、イナ……ィ」
カリナ・オルデウスはここまで呟くと、絶命した……。