素直で素直じゃない複雑関係

最悪な出会い

「いってきます」

私はそう声を出して、玄関のドアを開けて外に出た。
私の名前は葵梨紗(あおいりさ)、16歳の高校1年生だよ。

今日は6月の日曜日。
私は空を見上げて思った。
今日もきれいな夜空だなぁ。

今日は日曜日でお休みだから、大好きなメイクをして大好きな服を着るの。
胸元にフリフリがついた肩出しのピンク色のトップスに、水色のミニスカート、水色の靴下を履いて、靴はリボンのついた白い厚底履。
私は小学生の頃からずっとオシャレが好き。
だけど、学校では「ちょっとガサツな女子」として有名。
なんでってそれは、かわいくいると男子が寄ってくるから。
その視線がなんだか嫌なものに感じて、私は「オシャレな私」を隠すことにしたの。

でも、休みの日はこうやって好きな格好をして外に出る。
私が住んでるのは東京で、ちょっと歩けばみんなが想像してるような場所に出る。
それと、私は夜の街が好きなんだ。
キラキラして見えるから。
だから7時から9時まで、こうやって遊びにくるのはいつものことなの。

もちろんお父さんとお母さんには許可取ってるよ?
大丈夫、大丈夫。

私は軽い足取りで、ゲームセンターに入った。
最近クレーンゲームやりたいって思ってたんだよね。
なんでも、私の好きなルノちゃん人形がいるらしい。
絶対ゲットしたい!
そして、私はようやく見つけたルノちゃん人形のクレーンゲームの前で止まった。

***

「やった〜!取れた!」

小さな声でそう呟いて、ルノちゃん人形を眺めた。
これで1000円も使っちゃったけど、まあ安いものだよね。

「じゃあ、次はどれにしようかな?」

私はまだお金を使う気で、周りを見渡した。
その時、奥で不穏な空気が流れていることに気がついた。
メガネをかけた「オタク!」って感じの男の子が、3人のヤンキーみたいな男の子たちに囲まれていたのだ。
私は気になってちょっと近づいてみることに。
そっちを見ないようにして、会話を聞いた。

「オタクく〜ん。今日も金貸してくんない?」

「え、えと……その…」

「あ?なんだよ、貸せねーとかいわねぇよな?」

「ひっ…」

やっぱりよくないことしてた。
しかもカツアゲとか、私の嫌いなやつだ。
私は思わずその男の子を守るようにして前に立った。

「ちょっと、カツアゲとかよくないんじゃないの!」

「あ?なんだテメェ」

ギロッと睨まれたけど、私はひるまず睨み返した。
すると、突然男はニヤッと口角をあげた。

「へ〜かわいい顔してんじゃん。じゃあ、君が俺らと遊んでくれんならいいよ」

「はぁ!?無理だし!お断り!」

私が耳を疑った。
これだから嫌なんだ、かわいい格好するの。
別に男たちのためにこの格好してるわけじゃないのに。
そう思っていると、隣にいた男に腕を掴まれてしまった。

「ちょっと離して!!」

「いいじゃん、遊ぼうよ。ね、名前なんて言うの?」

なんで話しかけちゃったんだろ。
私はいつもお人よしだから助けたくなっちゃう。
よくない癖だよね。
振り解こうとしても、全然振り解けない。
そんな時奥の方から声が聞こえた。

「ちょっと、離しなよ」

前から男の子が歩いてきて、彼は私たちの間に割って入った。
そして男の腕を払い落とす。
男の子はふわふわした白い髪に、濃い緑色の瞳、左頬に絆創膏をつけた少し幼い顔の子だった。
知らない人だけど、助けてくれたのかな?
すると、あの男たちは白髪の男の子に詰め寄った。

「おい、お前なに割って入ってきてんだ?」

「そうそう。調子乗ってんじゃねーぞ」

すると、白髪の男の子は男たちを睨んで言った。

「僕、この子の彼氏だから。やめてくれないかな?」

「は…?彼氏いたのかよ。シラけたわ」

男たちはため息をつき、さっそうとその場を去っていった。
そうして私と白髪の男の子は同時にホッと息を吐いた。
その後、あのいじめられていたメガネ男子が私に言った。

「あ、あの…ありがとうございました…!!で、では…!」

そう言って彼もまた去っていってしまった。
取り残された私たちは顔を見合わせる。
すると、さっきの騒動で注目を集めてしまっていることに気がついた。

「えっと、外に出ます?」

そう聞かれて、私はコクリと頷いた。
急いで外に出て、近くの公園に言った。
そして、ふたりでベンチに座る。
奇妙な状況だと思った。
初めたった男の子と隣に座っているなんて。
ソワソワしてなにも言えないでいると、男の子の方から声をかけてくれた。

「あの…大丈夫でしたか?」

「え?あ、うん!助けてくれて、ありがとう!」

私は明るくそう言った。
すると、男の子はホッとした表情を見せた。
それから私は男の子の姿をまじまじと見てしまう。
ダボっとした茶色のトップスに黒色のスボン。
全体的にダボッと着崩してスタイルもいいからか完璧に着こなしてる。
その姿を見ると、私と同じオシャレが好きなタイプな気がする。
そんなことを考えていると、突然男の子に言われる。

「あの、間違ってたらすみません。お名前…葵梨紗さんで合ってますか?」

私は驚いて目を見開いた。
初対面だと思っていたが、違ったのかもしれない。
でも、見たことないと思うんだけどな。

「あ、合ってますけど…。どうして知ってるんですか?」

「えーっと…」

私の質問に頭をかく男の子。
答えたくないみたい。
だったら、質問を変えてみよう。

「じゃあ、あなたのお名前は?」

「え?うーん…」

名前も教えてくれないの?
なんだか怪しくなってきて、私は疑いの目を向けた。
それに気がついたように男の子は言った。

伊織佑(いおりゆう)

「え?」

「僕の名前、伊織佑だよ」

「そ、そうなんだ…!教えてくれてありがとう」

タメ口になったから、つられて私もタメ口になってしまった。
聞いたはいいんだけど、やっぱり名前に聞き覚えはない。
不思議な男の子だ。
それから無言になってしまって、その空気を破るように伊織が言った。

「そういえば、葵はどうしてゲームセンターに来たの?ひとり?」

「あー、うん。ゲームとか好きなんだよね。でも、時々変な人に絡まれて面倒」

そう言ってため息をついた。
すると、伊織はクスッと笑った。

「そっか。大変だね」

「うん。本当に。ねえ、伊織はどうしてきたの?」

「あ、僕のことは佑でいいよ。んーと、たまたまかな。息抜き…みたいな?」

「へー」

息抜き、かぁ。
私もそんなようなものなのかな?
やっぱり佑から似たようなものを感じる気がする。
その後私たちはいろいろなことを喋った後、佑がなにかあったら嫌だからと家まで送ってくれた。
かれこれ30分以上話していたことに驚いた。
家族以外でこんなにも自然に話せる相手、久しぶりかもしれない。
まあ、いるにはいるんだけどね?

「じゃあ、また会おうね」

「うん!またね」

そう言って佑とは別れた。
“また”って言ってくれた。
もう一度会えるのだと思ったら、なんだか嬉しかった。

でもこれが最悪の出会いだったなんて、思いもしなかった。
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