おいしそうに食べる君が、苦手です〜ずるい年下後輩の甘い執着〜
「おいしい。ここのカルボナーラ、生クリームじゃなくて卵だけで作ってるんですね。少し濃いめだけど重くない」
「詳しいね」
「食べてれば、なんとなくわかります」
橋本くんがまた一口、食べた。麺を口に含んで、ゆっくりと咀嚼する。目が細くなって、首筋がわずかに動く。その動きから、どうしても目が離せなかった。
これが苦手だと思っていたものの正体だと、このとき初めて気づいた。
苦手じゃない。ただ、直視できないだけだ。私は視線をペンネに戻した。
ふと気づくと、橋本くんがこちらを見ていた。私の手元を、あるいは私の顔を、静かに。
目が合うと、何事もなかったように視線を皿に戻した。それだけのことなのに、なぜか耳が少し熱くなった。
それからだった。橋本くんが、ほぼ毎日私を誘うようになったのは。
部署全員が揃っている日でも、人が少ない日でも、関係なく「水野さん、今日ランチどうですか」と同じ声のトーンで聞いてくる。
ある日の昼休み直前。隣の席の井筒さんが橋本くんに声をかけた。
「橋本くん、今度ランチ行こうよ。おすすめのお店教えてほしいな」
橋本くんは資料から顔を上げた。
「すみません。その時間は、先約があるので」
「えー、もしかして彼女?」