おいしそうに食べる君が、苦手です〜ずるい年下後輩の甘い執着〜
「違います」
それ以上は説明しなかった。井筒さんが「じゃあまた今度ね」と笑って席へ戻る。
私はパソコンの画面を見たまま、ふと引っかかった。
先約? 橋本くんが誰かと個別にランチへ行っている話なんて、聞いたことがない。
そう思った瞬間──。
「水野さん」
いつもの声がした。顔を上げると、橋本くんが立っていた。
「今日、ランチどうですか」
私は一瞬、言葉を失った。
「あー、ごめん。今日はちょっと」
「そうですか。それじゃあ先約、なくなりましたね」
「え?」
「いえ。また誘います」
私は首を傾けながら、彼の背中を見つめた。断ったのに、残念そうな顔はしていなかった。
そして翌日、彼はまた同じ声で聞いてきた。
しつこいとは思わなかった。ただ、不思議だった。なんで毎回誘うんだろう、という疑問を抱えたまま、気づいたら五月になっていた。