おいしそうに食べる後輩が、ずるい〜年下くんの一途な溺愛〜

「そのままの意味です」

それ以上は、説明しないつもりらしかった。私は窓の外に視線を逃がした。

彼が私の食べ方をじっと見ていることに、気づかないふりをした。



帰り際、並んで歩きながら、橋本くんがふいに口を開いた。

「水野さんと食べると、俺がおいしそうに食べてるって言ってくれるから」

「え?」

「あなたを毎回誘う理由」

前を歩く橋本くんが、歩調を緩めないまま、ふいと首だけをこちらに巡らせた。すれ違う風のなかで、細められた瞳と視線が交差する。

「それだけ?」

「今のところは、それが一番大きい理由です」

そう言ってまた前を向いた彼の耳の血色が、五月の日差しのせいで、心なしかいつもより少し濃く見えた。

ずるい人だな、と思った。『今のところ』という言葉が、なぜか頭の端っこに引っかかったまま、離れなかった。

五月の風が、二人の間を抜けていった。
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