おいしそうに食べる君が、苦手です〜ずるい年下後輩の甘い執着〜

ある金曜日の昼、橋本くんと二人で和食屋に入った。窓際の席を選び、腰を下ろす。

外では若葉が日差しを受けてやわらかく光っていて、店内には出汁の匂いが満ちていた。

橋本くんはその日、肉じゃが定食を頼んだ。私は鮭の西京焼き定食を。

料理が来るまで、橋本くんは窓の外をぼんやり眺めていた。スマホを触るでもなく、話題を作ろうと焦るでもなく。

この人は、沈黙を埋めようとしない。そのことに、私は今さら気がついた。

彼が肉じゃがを一口、箸で崩す。汁気を含んで光る芋ごと、口に運んで、ゆっくりと咀嚼する。全部、一秒もかからないうちに起きて消える。

「……水野さん」

ふいに、橋本くんが箸を持ったまま私を見た。

「水野さんって、いつもすごくおいしそうに食べますよね。食べてるとき、目が変わるんです。仕事してるときと、全然違う顔になる」

私は箸を止めた。

「そんな顔、してる?」

「してますよ」

真っ直ぐ、見たものを見たまま言っている顔だった。私は何と返せばいいかわからなくて、西京焼きに箸を入れた。

「橋本くんも、おいしそうに食べるよね」

口から出てからしまった、と思った。橋本くんがわずかに目を丸くして、それから小さく「ありがとうございます」と言った。

「水野さんに言われると、なんかいいですね」

「どういう意味?」
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