たった一日の恋人役のはずが、敏腕社長の妻になりました
唐突に飛び出た言葉に首をひねる。
「専務から自分の秘書にならないかと誘われていたよな」
「あっ。はい」
あのときのことかとようやく理解する。
私にとっては思い出さないと覚えていないくらいの些細な出来事だったので、成海社長がこのタイミングで再びその話題を出すとは思わなかった。
「あのとき、もしも梅本が専務の秘書になりたいと言ったらどうしようかと焦った」
成海社長はやや視線を下げ、膝の上で手を組んだ。
「実は今も焦ってる。俺の知らない間に再び専務が梅本を口説いていたらどうしようかと思い、今回の出張にきみを連れてきた。俺のそばに置いておけば安心だからな」
「成海社長……」
そこまでして秘書としての私を大切に思ってくれていると知り、感激で胸が震えた。
上司にここまで言ってもらえるなんて秘書冥利に尽きる。
「成海社長!」
感極まって、思わず叫んでしまった。
成海社長が顔を上げる。私は体ごと彼の方を向き、真正面からじっと見つめた。
「私は、成海社長の秘書です。そのことに対してつまらないと思ったことは一度もありません。むしろ、成海社長の秘書になれて光栄だと思っています」