たった一日の恋人役のはずが、敏腕社長の妻になりました
視察を終えた途端に雨と風が強まり、飛行機も新幹線も止まり、高速道路も通行止めになった。それくらいの悪天候だったのだ。
そのせいで東京に戻れなくなり、急きょホテルに泊まったのだが……。
そこまで思い出し、成海社長からキスをされたときのことが鮮明に蘇る。
あの日からしばらくは成海社長の顔がまともに見られなかったが、最近になってようやく元に戻れたのに。
ふとした瞬間に思い出しては、胸がドキドキと鳴り始める。
落ち着けと、自分に言い聞かせ平常心を取り戻した。
車は順調に高速道路を進んでいたけれど、少しずつ速度を落とし、やがて止まる。
「やはり混んでるな」
成海社長がぽつりと呟いた。
休日だけあり、出掛ける車が多いのか高速道路は混み合っている。
成海社長は車内のサンバイザーに取り付けられているケースからサングラスを取り出してそれを掛けた。
仕事中のスーツ姿の彼とは印象ががらりと変わり、思わず胸がドキッとなる。
成海社長、サングラス似合うなぁ……。
輪郭がシュッとしていて、鼻筋が高いからだろうか。サングラスを掛けた姿がとても画になる。
思わず見惚れていると、渋滞が進み出し、ゆっくりとだが車が動き出した。