たった一日の恋人役のはずが、敏腕社長の妻になりました

 面倒だからと家にこもってだらだら過ごしてばかりいないで、もっと外に出て刺激を受けた方がいいかもしれない。

 月に一回は出掛けることを今年の目標にしよう。


「成海社長は旅行とかには行きますか?」


 彼の場合は仕事が忙しくてそれどころではないのだろうか。

 少なくとも一緒に暮らし始めてから成海社長が遠くに出掛けるところは一度も見たことがない。

 平日は朝から夜まで仕事だし、休日に出勤する日もあるほど多忙だ。たまの休みはジムに行くのを見かけるくらいで、あとは部屋で仕事をしていることが多い。

 もしかして成海社長も今日は久しぶりの旅行なのかな……。

 そんなことを考える私の隣で、成海社長は眉間にしわを寄せながら考え込むような表情を浮かべている。

 そんな固い表情になるくらい、私の質問には答えづらいのだろうか。

 話の流れで、成海社長は旅行に行くかどうかを尋ねただけなのに……。


「梅本」


 しばらくしてから低い声で名前を呼ばれてドキッとなる。


「は、はい」


 返事をした声が思わず裏返ってしまった。

 成海社長が静かに口を開く。


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