たった一日の恋人役のはずが、敏腕社長の妻になりました
「霧矢さん、四月から広報部の課長に昇進するらしいですよ」
「そうなんだ」
仕事ができる人だとは思っていたので納得の人事だ。
それでも、霧矢さんは雅貴さんと同じ歳の三十五歳なので、社内の他の課長に比べると早い出世になる。それくらい優秀ということだろう。
「やっぱりすごいね、霧矢さんは」
仕事もできるし、美人だし、非の打ち所がないのではないか。
尊敬の念を抱く私の一方で、玉置さんはどこか腑に落ちない様子だ。
「確かにすごいですけど、霧矢さんが人事部長に取り入ったって噂もあるんですよ」
「そうなの?」
霧矢さんがそんなズルをするような人には思えないし、それは人事部長も同じ。
「それはただの噂だよ」
思わず笑い飛ばしてしまう。
「私は霧矢さんの実力だと思うな」
そう言った私を玉置さんがじーっと見つめてくる。
「な、なに?」
あまりにもジトッとした目で見てくるので、私の発言が気に触ったのだろうか。
玉置さんがはぁっとため息をこぼした。
「梅本さんはのんびり構えすぎなんですよ。もっと霧矢さんに敵対心を持った方がいいです。あの人、成海社長が結婚してからも狙っているって噂だし」
話に熱がこもったのか、玉置さんがテーブルを軽くトンとたたく。