たった一日の恋人役のはずが、敏腕社長の妻になりました

 彼に初めて抱かれたのが二週間ほど前のこと。

 慣れない私を雅貴さんは優しくリードしてくれた。

 あの日以来、雅貴さんへの想いがさらに溢れ、彼のことが頭から離れない。

 仕事中は何とか集中を保っているけれど、それ以外の時間はつい彼を思い出してしまう。

 二度目は私が風邪を長引かせていることもあってまだない。移してしまうといけないのでキスもできない状態。

 好きなのに触れられない。そんな歯痒さのせいもあり、余計に雅貴さんのことばかり考えてしまう。

 そのうち仕事にも影響が出るといけないので、そろそろしっかりしないと……!

 気合を入れる意味で、私は両手で頬をパンッと叩いた。


「梅本さん?」


 そんな私を玉置さんが不思議そうに見る。


「本当に大丈夫ですか?」

「大丈夫。心配かけてごめんね」


 微笑みかけると、玉置さんは少し安心したのか「無理しないでくださいね」と言ってランチの中華丼を食べ始めた。

 私もそばを食べ、少ししたところで玉置さんが思い出したように「そういえば」と声を上げる。


「霧矢さんの噂、聞きましたか?」

「噂?」


 なんだろう。

 首を傾げると、玉置さんが内緒話をするように少しだけ私に顔を寄せる。


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