アイヴィーの花冠 ~シスコンと恋愛を拗らせた私はこの度、好きな人の屋敷でメイドとして働くことになりました~
 それにいっそ平民と騎士様とかだったら燃えるような恋なんてこともあり得たのかもしれないが、公爵家のご子息と田舎の男爵家令嬢。

 微妙というか、夢から覚めてしまうような身分差である。なのでそういう関係になることは今後もない。
 だから無難に返す他ないのだ。

「よくしていただいています」
 もちろんこの言葉も嘘ではない。良すぎると言ってもいいほどの職場だ。

「そう……。それは良かったわ」
 マリー様はつまらなさそうに視線をカップへと落とす。
 彼女には申し訳ないのだが、私がさっさとディートリッヒ様のことを諦めでもしない限り、話題を提供できそうもない。

 おそらく、ディートリッヒ様にも同じような話題を振ったのだろう。
 その結果面白い話が聞けず、試しに私にも振ったのに、収穫はなく……といったところだろうか。
 当たり前だ。ディートリッヒ様は私をただのメイドとしか見ていないのだから。

 そう思うと、変なことに巻き込んでしまったことがなんだか申し訳なく思えてくる。
 巻き込みたかった訳ではないけれど、でもそうなったのは私の責任ではある。

 やっぱり諦めるべきなのかしら、ね。
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