アイヴィーの花冠 ~シスコンと恋愛を拗らせた私はこの度、好きな人の屋敷でメイドとして働くことになりました~
 幻聴なら幻聴で構わない。
 明日、マリー様と一緒にディートリッヒ様に謝罪した後、予定通りタイピンを捨ててしまうだけだ。

 だがもしも幻聴じゃないのなら……。
 公爵家のご令息と田舎の男爵令嬢じゃ一緒になれる見込みなどない。けれどきっとこれから踏み出す一歩は大きく変わるだろう。

 苦いだけの初恋は、苦くても甘酸っぱい思い出に変わる。

「一生のお願いです、マリー様。ディートリッヒ様には内緒にしますから教えてくださいませんか?」
 今度は私が頼み込む。
 マリー様のをまねて、両手をくっつけて首を傾げる。私がやっても可愛くもなんともない。けれど彼女は頷いてくれると信じている。

 困った顔で仕方ないと渋った口を開いてくれるだろう。そう思って、閉じた目を開いてみる。
 けれどマリー様の表情は私が思っていたものとは全く違った。

「じゃあ私、何も悪くないのね! むしろ誉めてもらいたいくらいだわ!」
 目の前の少女はほっと胸をなで下ろすと「アイヴィーからの一生のお願いなら聞かないとよね!」と嬉しそうに笑うのだった。



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