アイヴィーの花冠 ~シスコンと恋愛を拗らせた私はこの度、好きな人の屋敷でメイドとして働くことになりました~
「アイヴィー、一生のお願い。この言葉を聞かなかったことにはしてもらえないかしら?」

 心配になって声をかけてみれば、今度は顔の前でぱちんと両手をつけて懇願のポーズである。こてんと小首を傾げる姿が様になっていて、こんなの普段の私ならイチコロである。

 マリー様のことを思えば、ここは「はい」と頷くのが正解なのだろう。

 だが私は食い下がる。

「マリー様。そのことを詳しく教えていただけませんか?」
「私の一生のお願い……聞いてくれないのね」
「だってもう一度聞いちゃいましたから」
「そうだったわね……」
 一生に一度とは言っていないのだから、何度でも使ってもらって構わないのだがここは遠慮してもらうことにしよう。今度はそんな意地悪は言わないから。だからこの一度だけは許してもらいたい。
 心の中でごめんなさいと謝りつつも、続けて言葉を紡ぐ。

「それに私、さっき失恋したんです」
「え? 嘘でしょ? なんで? だってディートリッヒはそのために……」
「無駄な思いは諦めて、前に進むことにしたんです。でも、さっきの言葉を聞いたら私……」

 だって私は前に進みたいから。
< 77 / 241 >

この作品をシェア

pagetop