政略結婚ですが、クールな旦那様の溺愛が始まりました
鉛のような心を抱えながら帰宅し、二時間が経った頃。

「ただいま」

帰ってきた慧が、キッチンにいたすみれに声をかけた。


「あっ、おかえりなさい。ご飯、もうすぐできますから」


すみれは、やっぱり彼の顔を真っ直ぐ見られなくて……。なんとか笑みを浮かべ、すぐにサラダのトマトを切り始める。


慧の視線を感じるが、気づいていないふりをする。手が震えそうになりながらも、下を向いたままサラダを盛りつけていった。


「着替えてくる」


短く言い置いた慧が、リビングから出ていく。その瞬間、息を大きく吐いていた。


知らずにすみれを包んでいた緊張感が解け、脱力しそうになる。彼のことは好きなのに、同じ空間にいると今まで以上に心身ともにリラックスできないのだ。


深呼吸をして気を取り直し、テーブルに料理を並べていく。準備が整った頃、スマホが短く鳴った。


【明日、ランチに行かない? いいお店見つけたの】


美弥からのメッセージに、思わず頬が綻ぶ。彼女に聞いてほしいことがありすぎて、今すぐに返信したいくらいだった。


そこへ慧が戻ってきたため、すみれはスマホをテーブルに置いた。


「ちょうどできたところです」
「ああ。ありがとう」
「いいえ」


ふたりともダイニングチェアに腰掛けたところで、彼が両手を合わせる。すみれも同じようにし、それぞれ「いただきます」と言って料理に手をつけた。

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