政略結婚ですが、クールな旦那様の溺愛が始まりました
「温かいうちに食べましょう。すぐにお吸い物とご飯もよそいますね」
「手を洗ってくるよ」
「はい」


慧がリビングから出ていき、その間に準備を整える。温かい緑茶と水も注いだところで、彼がワイシャツ姿で戻ってきた。


コートとスーツのジャケットは脱いできたようだ。ネクタイは軽く緩められている。


(こういう慧さんも素敵だな……)


慧は、いつも隙がないほどにビシッとしている。オーダーメイドのスーツに似合う体型で、家を出るときも帰ってきたときも一切の乱れがない。
だからのか、スーツをラフに着ている姿には普段とは違う色気が垣間見える。


「すみれ?」


ぼんやりとしていたすみれは、彼の声でハッとする。慌ててダイニングチェアに腰掛け、「食べましょう」と口にした。


「いただきます」と声が揃い、そんなことに心がほわっとする。普通の家庭なら当然のことも、すみれにとっては大切な瞬間だと思えた。


「西京焼きか」
「あっ、苦手じゃなかったですか?」
「いや、好きだよ」
「そ、それならよかったです」


慧の声音で『好き』と紡がれただけで、すみれの鼓動はうるさくなる。自分に向けられているわけではないのはわかっていても、拍動が勝手に騒いでいた。


お吸い物に口をつけた彼が、次いで西京焼きを一口食べる。すると、驚いたような顔をした。


「うまいな。今まで食べた西京焼きの中で一番おいしい」


お世辞だと思うが、『一番』という言葉に心が浮き立ってしまう。しかし、すみれは浮かれないように息を吐いた。

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