政略結婚ですが、クールな旦那様の溺愛が始まりました
「そんな……。慧さんが普段食べられている料理と違って、ただの家庭料理ですし」


卑屈な言い方をしたつもりはなくとも、そう捉えられていないだろうか。そう思ったが、慧が日頃から口にしている高級料理とは比較にもならないのは事実だ。


「本当だ。俺はこの西京焼きが一番好きだよ。なにか隠し味でも入れてるのか?」


繰り返し褒められて、どんな顔をすればいいのかわからなくなる。


「ありがとうございます」


嬉しいのにどぎまぎして、小さな声でお礼を言って頷いた。


「お味噌は京都の白味噌で、それ以外はスーパーで買えるものばかりですが、少しだけ柚子の果汁と皮を入れてます。私が柑橘系の果物が好きで、冬はよく柚子も買うんですけど、白味噌と合うので」


絞った柚子の果汁と、すり下ろした皮。どちらもほんの少しずつ入れていて、一般的なレシピとは違う。
白味噌とみりんと酒だけで作ることもあるが、すみれは柚子を入れる方が好きだった。


彼が西京焼きをもう一口食べ、相槌を打つように首を縦に二度振る。


「それだな。主張は強くないが、白味噌の旨みの中に柚子の風味がある。でも、本当にさりげないから最初に食べたときはすぐに気づけなかった」
「慧さんは柚子はお好きですか?」
「わりと好きな方だな。家ではわざわざ食べないが、外だと柚子やレモンの風味がするものは好んで食べることも多い」
「そうなんですね。じゃあ、今度はレモンドレッシングのサラダを作ります。両親と美弥のお墨付きなんですよ」


笑顔で言い切ったが、調子に乗ってしまったかと焦る。ところが、慧は瞳を緩めて優しい笑みを浮かべた。

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