政略結婚ですが、クールな旦那様の溺愛が始まりました
「慧さん……!」
「すみれの願いなら、なんでも叶えてやりたいと思ってる。だが、この件は別だ。どんな理由があろうとも、受け入れられないな」
「で、でも……私はもう慧さんを……」
「愛してない?」
「っ……」


鋭い視線でじっと見つめられ、言葉に詰まってしまう。すみれは、嘘でも慧を『愛していない』なんて言えなかった。


「そう、です……」


精一杯の嘘を零した声は、微かに震えていた。冷静にしているつもりだが、きっと動揺は隠せていない。視界は、今にも歪んでしまいそうである。


「だったら、ちゃんと言ってくれ」


すみれの弱点を突くように、彼が厳しい口調で告げる。すみれを見る双眸は冷たく、中途半端な言葉では納得しないと物語っていた。


「だから……離婚を……」
「そうじゃない。俺はすみれの気持ちを訊いてるんだ。本当に好きじゃなくなったのなら、俺を愛してないって言えばいいだけだろ」


咄嗟に噛みしめた唇が戦慄き、喉の奥がますます熱くなる。次に口を開けば、先に涙が零れてしまいそうだった。


「ほら、言って。そしたら、俺も考えるよ。でも、言えないなら認めない」


すみれの願いを突っぱねる慧が、眉をグッとひそめる。冷静に見えていた彼の心の内があらわになった気がした。


(だって……こうするしか……。でも……)


本当にそうだろうか。果たして、これは正しいのだろうか。


誰にも相談できず、ひとり窮地に立たされていた。真輔の短いメッセージに追い詰められ、道はもうないと思っていた。


けれど、間違った決断だということはないだろうか……。自分の中にそんな迷いが芽生えたことに気づき、慌てて口を開く。

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