政略結婚ですが、クールな旦那様の溺愛が始まりました
解決策が見つからないまま、時間だけが過ぎていく。
約束の期日の前夜、すみれは覚悟を決めるしかなかった。ついさきほど、真輔から明日の待ち合わせ場所が送られてきたからだ。


今夜、慧は早くに帰宅した。いつも通りに夕食を済ませ、今はようやく一息ついたところである。


ソファにいる彼は、タブレットを見ている。すみれは四つ折りにした紙を手に、隣に腰を下ろした。


「すみれ」


慧がすみれのこめかみに口づけ、唇にもキスが落とされる。優しい笑みを浮かべる彼を前に、すみれの鼻の奥がツンとなった。


「慧さん……お願いがあります」
「どうした?」
「私と……」


喉の奥がグッと熱くなって、胸が焼けつくように痛む。


あんなにも恋焦がれていた人との結婚生活に自ら終止符を打つなんて……。こんな日が来るなんて、夢であってほしかった。


本音は心の中に押し込め、深呼吸をして続きを紡ぐ。


「離婚してください」


その直後、沈黙が降りた。
慧は予想もしない言葉に驚いたようで、言葉もなく瞠目している。すみれは唇を噛みしめ、離婚届をローテーブルに置いた。


「私の欄は記入しています。慰謝料は……お支払いできるだけします。ここもできるだけ早く出ていくように――」


すみれの話を遮るように、骨ばった手が離婚届を取る。次の瞬間、彼はそれをビリビリと破いた。

< 175 / 204 >

この作品をシェア

pagetop