政略結婚ですが、クールな旦那様の溺愛が始まりました
「それを言うなら、お前の言葉で大きな誤解を生んだんだから、俺の方こそ謝ってほしいくらいだよ」
「は?」
「婚約披露パーティーの日、すみれは俺たちの会話を聞いてたんだ。お前の余計な言葉で、すみれは俺に愛されることはないと思い込んだらしい」
「なるほど。それは悪かったよ……と言いたいところだが、自業自得だろ。そもそも、慧がしっかりしていればもっと早くに誤解は解けてたんじゃないのか? どう考えても、回りくどいことをして最初にちゃんと告白しなかったお前が悪い」


きっぱりと言い切られ、慧の不満が大きくなる。納得できない反面、彼の言葉が正しいのもわかっていた。


「俺が謝るとしたら、すみれさんに……だ。慧の気持ちを知らなかったとはいえ、随分と冷たく接したからな」


誠二が眉を下げ、顔に後悔を浮かべる。


確かに、彼はすみれに対してまるで嫌っているような態度だった。ふたりが接したことはほとんどないが、彼女も察していたのは知っている。


だからこそ、誠二からそんな言葉が出てくるとは思いもせず、慧は少しだけ驚いた。


「必要以上に親しくする気はなかったし、なんならお前たちが離婚してもいいと思ってた。だから、すみれさんにはしっかり壁を作ってたし、彼女もそれをわかってて俺に必要以上に近づかないようにしてたんだと思う」
「すみれは、周りのことばかり気にしてるからな」
「……今度、きちんと謝るよ」


慧が小さく頷くと、誠二が「そろそろ帰った方がいいんじゃないか」と言った。


「そうだな。誠二もたまには早く帰れよ」
「副社長が仕事を減らしてくだされば、毎日定時に帰れるんですけどね」


秘書の顔に戻った彼に、肩を竦めて「それは無理だな」と苦笑する。呆れ交じりの微笑を返されたが、その顔つきは慧を理解していると物語っていた。


「ああ、そうだ。慧」


副社長室を出る間際に呼び止められ、おもむろに振り返る。


「誕生日おめでとう」


短い祝辞に「どうも」と応え、慧は軽やかな足取りで副社長を後にした。

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