政略結婚ですが、クールな旦那様の溺愛が始まりました
数時間後、副社長室で今日の報告をした慧に、誠二が持っていたスマホを落とした。


『六条すみれと見合いしたぁ?』


素っ頓狂な声と、落ちたスマホが床を滑った音が重なる。慧は表情を変えずにそれを拾い、彼に手渡した。


『ああ、今日の昼に。仕事には支障はないし、別にいいだろ』


今日は土曜日で、会社は休みだ。しかし、夜には複数社が集まる会食が控えているため、慧は出社した。


『待て待て待て! 俺はなにも聞いてないぞ!』


誠二も慧に合わせて会社に来たのだが、予想外の報告に驚きを隠せないようだ。


『だから、今話しただろ』
『事後報告なら意味はないんだよ! どういうつもりなんだ!?』


怜悧な彼らしくなく声を荒らげる姿は、なかなかに珍しい。それこそ、子どもの頃以来ではないだろうか。
呑気なことを考えつつも、とりあえずそれらしい理由を並べ立てる。


『俺もいい年齢だし、そろそろ身を固めてもいいかと思っただけだ。だが、政略結婚は嫌だし、かと言ってまったく利益にならない結婚だとうるさい奴らを納得させられないだろ。その点、六条には華族という出自がある』
『とっくに没落してるけどな』
『でも、旧華族に弱い人間も一定数いるだろ。それに、中途半端に地位があると、それはそれでやりにくい。こちらの足を引っ張るような家では困る』
『そうは言っても、六条なんて会社はギリギリ持ちこたえてるようなレベルだろ。社長夫妻はあちこちのパーティーで見かけるが、招待されてる理由は過去の栄光と関係性がある企業の情けみたいなものだ。御門にはふさわしくない』

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