愛より金を選んだ男爵令嬢は人違いで溺愛される
 ぱぁっと満面の笑みを浮かべたアンジェリカ様は、勢いよく振り返るとその名を呼んだ。

 するとどこからか昨晩困った表情を浮かべていた使用人がアンジェリカ様と同じような笑みを浮かべてやってきた。

「いかがなさいましたか、お嬢様」

 そう聞くものの、彼にはもうその先の言葉が分かっているような気がした。

「お義姉様とラウスお兄様のお夕食もダイニングルームに用意して!」
「かしこまりました」

 ペコリと一礼してから去っていくシェードさんは、今にもスキップを踏みそうな足を必死で押さえ込むように両手を足にべたりと貼り付けたままだった。

「お父様に頼んで席は移ってもらわなきゃ!」

 そんな彼に背を向け、朝食をとるためにダイニングルームに向かっていくアンジェリカ様の頭はすでに夕食のことでそのおおよそを占めているのだろう。

 お茶会って結局どうなったんだろう?
 楽しそうな後ろ姿にそう尋ねることは野暮な気がした。

「昨日に引き続き、アンジェリカが申し訳ない……」
「ラウス様、顔を上げてください」

 アンジェリカ様の後ろ姿が見えなくなった後、私たちはすぐに部屋に入ることはなかった。

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