愛より金を選んだ男爵令嬢は人違いで溺愛される
 目の前で次々と食事を平らげていくラウス様に続いて私も遠慮なく口に運んでいく。
 悩みが一気に減ったせいか、元から美味しいご飯を一層味わえる。

 このバターの風味がたまらないクロワッサンは昨日の朝も食卓に並んでいたはずなのに、全くその美味さを感じ取れていなかったのだから気分というのはなかなか大事な役割を果たすものだと感心してしまう。

「モリア、美味しいか?」
「はい!」

 時折、ラウス様はその手を止めて私にそう問いかける。
 この料理が美味しくないはずがない。ラウス様だって食べているのだから聞かずともわかるはずなのに不思議なものだ。

「そうか、そうか」

 目の前で嬉しそうに笑いかけるラウス様は昨日のお義母様とサキヌ様とよく似ている。

 ラウス様の顔立ちはお義父様に似ていて、サキヌ様の顔立ちはお義母様によく似ている。
 真面目な雰囲気を醸し出すラウス様と柔らかな雰囲気を纏うサキヌ様とではあまり似ていないのだけど、やはり家族なのだと改めて実感する。

 ラウス様も、この家の誰もが家族を大事にしている。もちろん家族として迎える私のことも例外として扱ったりしない。

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