愛より金を選んだ男爵令嬢は人違いで溺愛される
『家族を大事にする人に悪い人はいない』と昔からよくお父様が言っていた。

 逆に家族すら大切に出来ない人が他のものを大切に扱えるはずがないとも。
 だから彼らはいい人なのだろう。分かっていたけど、改めて実感する。

 この居場所に居られる期間は決まっていない。
 けれど限りは確かにある。それでも私はラウス様に、そしてカリバーン家に尽くそうと決意を固くする。

「そろそろ出る」
「はい。では今日も玄関までご一緒いたします」
「ああ」

 食事も終わり、席を立つラウス様に続いて部屋を後にする。ラウス様の後ろを付いていこうとすると、ドアの前で待っていてくれたラウス様が私の手を取り、包み込む。

「ラウス様?」
「嫌……か?」
「いえ」
「そうか。ならこのままで……」

 突然のことで驚きこそすれ嫌ではない。
 嫌、ではないのだけれど、恥ずかしさはある。

 初日にこれ以上凄いことしたっていうのに、不思議だ。

 手から伝わる暖かさは次第に身体全体に行き渡っていく。
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