愛より金を選んだ男爵令嬢は人違いで溺愛される
 だがもし、いや万が一にもありえないが、ラウス様ならきっと結婚したら好意なんてものはなくとも、一応娶ったのだからという義務感から優しく接してくださるのだろう。

 それはそれで想像してしまうことすら申し訳ない気がする。
 フルフルと頭を振ってそんな考えは外へと放り出してしまうことにした。

「ああ、結婚くらいはしたかったな……」

 借金のカタにと自分からここに来ることを選択したというのに、最後の足掻きのような言葉が出る。

 口に出したところでどうにもならないのだけど、私だって一応婚期ど真ん中の女の子で、幸せな家庭というものに少しながら憧れは抱いているのだ。



 そう広くはない馬車で隣に座る、顔形の整ったラウス様を眺める。

 ただ前を見据えるその姿はやはり美しい。
 こんな近距離で見ることなどもうこれを逃したらないだろうからと存分に網膜に焼き付けることにした。

「……どうかしたか?」
「あ、ラウス様。お初にお目にかかります。私、モリア=サンドリアと申します」

 あんまりにも見つめていたせいで不快に感じたのか、綺麗に整った顔を崩して私の方に顔を向ける。

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