愛より金を選んだ男爵令嬢は人違いで溺愛される
 すると今度は私の方が居心地が悪くなり、視線を逸らしてまくし立てるように自己紹介をした。

「ああ、モリア。私はラウス。ラウス=カリバーンだ。これからよろしく頼む」
「ラウス様のお役に立てますよう頑張りますので、どうぞよろしくお願いいたします」
「頑張る……か」

 今後の意気込みを話すとラウス様の顔はほのかに赤らんだ。まるで求婚された少女のようだ。

 同じ貴族という枠組み内にいるとは言え、やはり身分の高い人の行動はよくわからない。

「それで、私はカリバーン家で何をすればいいのでしょう? 一通り家事などはこなせますが……」
「家事? それは使用人の仕事だから君がすることはない」
「では私は何を……」
「君はただ俺の隣にいてくれればそれで……」

 次第に小さくなる声に比例してどんどんラウス様の顔は熱を帯びて夕日のように赤く染まる。

「あの……大丈夫、ですか?」
「あ、ああ。大丈夫だ、心配はいらない」
「そうですか?」
「ああ!」

 力強く発したラウス様の声で会話は途切れ、再び馬車には静寂が訪れる。

 私の役目は警護、ということでいいのだろうか。

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