愛より金を選んだ男爵令嬢は人違いで溺愛される
 好意に甘え過ぎたこと?
 それとも気を遣わずにひたすら刺繍を続けていたことだろうか?

 だがアンジェリカの口から出たのは考えれば考えるほどに思いつくそれらとは全くの別物だった。

「よろしければそのハンカチ、私にいただけませんか!?」
「へ?」
「その美しい刺繍を抱くたびにお義姉様の顔を思い出すのです! そうすれば数々の苦痛もきっと耐えられるでしょう……。ですから、ですからどうか私にそのハンカチを!!」

 アンジェリカは熱い視線を私へと送り続ける。

 そんな私はといえば、特に何も考えてはいなかった。

 さすがに分けて頂いた材料で作ったものを売ろうなんて、そんなこと……全く考えなかったといえば嘘になるけど今は思ってない。

 だがさすがに手元の刺繍の終わったハンカチの行き先までは考えていなかった。

 こんな高価そうなものを使う予定もなさそうだし、若いのに色々と気苦労が多そうなアンジェリカにプレゼントするのもいいだろう。

 確かアンジェリカは数日後、婚約者である王子様と会うというのだという。あの、部屋に引きこもるほどに嫌がった婚約者様と。

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