愛より金を選んだ男爵令嬢は人違いで溺愛される
 だが初めこそ私と同じように刺繍をしていたはずのお義母様たちの、まるで手品でも見ているかのような好奇な視線には慣れていない。

 サキヌに至ってはアンジェリカとお義母様の感嘆の声を聞きつけてやってきたというのだから、プレッシャーが尋常ではない。

 慣れた動きの手が震えることはないが、針をつまむ指先に汗が滲んでいることは確かである。

「出来た……!」

 緊張からかいつもより時間はかかったものの、分けていただいたハンカチを無駄にすることなく仕上げられたことに胸を撫で下ろす。

 するともう終わったというのに、それはもう熱心な視線が手元に注がれている。

「ア、アンジェリカ?」

 キラキラキラキラと降り注ぐのはアンジェリカの視線だ。ただ一心に私の手元、もとい刺繍が終わったハンカチへと捧げられている。

「お義姉様!」

 かと思えばばっと私を見上げるように顔を振りかぶると、私の二つの手首をまとめるようにして捕らえた。

「な、何でしょうか!?」

 悪いことは特にしてはいないと思うのだけど、それでも今の気持ちは捕縛される罪人のようだ。

 罪状は何だろう?
 嘘をついたこと?
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