愛より金を選んだ男爵令嬢は人違いで溺愛される
 すると苛立たしげにボサボサになった頭を掻きながら顔を出すサキヌは、邪魔者を突き刺すかのような声で応対してくれた。

 どうやら寝て居たところを私のしつこいノック音によって起こされてしまったらしい。

「お休みのところをごめんなさい」
「義姉さん!? いや、もう起きるには遅い時間だし、気にしないで。それでお母様かアンジェリカに何かされた!?」

 纏う雰囲気を刺々しいものから柔らかなものへと一転させたサキヌの中ではあの二人はどんなイメージなのだろうか。

 疑問に思いつつ、二人にはしてもらったことはあれど何かされたわけではないので慌てて否定する。

「いえ、そういうわけではなくて……。ハンカチが出来上がったので、もしよろしければと思いまして……」

 もらって欲しいとは言い出せるわけもなく、こんな曖昧な言葉になってしまう。

「え、もう? さすが義姉さん、早いなぁ。ありがとう、大切にする」

 だがそんな私の態度を気にすることなく、サキヌはアンジェリカ同様快くそれを受け取ってくれたのだった。

 そしてそれを受け取ると私の目をジッと見据えて強く言い聞かせた。

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