愛より金を選んだ男爵令嬢は人違いで溺愛される
「一度、アンジェリカに言ったことがあるんだ。『お父様に頼めば婚約をなかったことにしてくれるかもしれないぞ?』と。けれどあの子は『私が頑張っていれば、お義姉様がおうちに来てくれるのでしょう?』と答えたんだ。初めはアンジェリカの言うことがわからなかった。けれどある日ふと、幼いアンジェリカは私のために王子の婚約者で居続けてくれていると知ったんだ。いつかやってくる義姉が過ごしやすい環境を作るために、あの子は根回しをしやすい環境を作り続けた」
「そんな……」

 私は彼女が苦労しただけの価値はある義姉になれているだろうか?

 親切をもらうだけもらって返せている自信はないのだ。

 今すぐにでもアンジェリカを抱きしめてあげたい衝動に駆られ、勢いよく立ち上がる。けれどドアへと向かおうとしている私をラウス様は制止した。するとトントンと弱々しくトビラの叩かれる音が静まった部屋へと反響する。

「アンジェリカ、入ってもいいぞ」
「お兄様、お義姉様」
「アンジェリカ……」
「一緒に、寝てもいいですか?」

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