愛より金を選んだ男爵令嬢は人違いで溺愛される
「モリアちゃん、まだよ。だからほら、お茶でも飲んで」
「そ、そうですね……」

「アンジェリカはああ見えて意外と強いんだから」

 お義母様はラウス様と同じように、あんなに小さな少女をそう称する。私の知らないアンジェリカを。

 私は一ヶ月ほどこの屋敷にお世話になってはいるが未だ家族にはなりきれて居ないらしい。

 ウェディングドレスが完成したら、ラウス様と結婚したら、彼女のことを、そしてラウス様達のことを理解できるだろうか。

 それはラウス様への答えを曖昧にしたままの自分自身を変えたいという思いを含み、胸の中に沈んでいく。

 お義母様は私の意識を少しでもアンジェリカから引き戻そうとするためか、何か考え事をしながらカップに口をつける。

 すると何かを思い出したかのようにハッと顔を上げた。

「そうだ、モリアちゃん。明日、お義姉様のところに行くことになったから!」
「明日、ですか?」

 以前の約束はラウス様の叔母様、シャロン様の飼っている猫が産気づいたということで延期になっていた。

 その後、全く音沙汰がなかったのだがすでに予定は立てられていたらしい。

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