愛より金を選んだ男爵令嬢は人違いで溺愛される
 アンジェリカは相棒のテディベアをそっと私の胸元へと差し出すと真っ直ぐに私の目を見つめた。

「わかったわ。この子と一緒に、アンジェリカの帰りを待っているわね」
「はい!」

 アンジェリカはハッキリと返事するとベッドから降りて、ネグリジェ姿のまま駆け出した。

「シェード、シェード」

 廊下で元気そうにシェードの名を呼ぶ声がする。やがて聞こえなくなったそれはおそらく嬉しそうに駆け寄った彼の胸へと吸い込まれていったのだろう。

「頑張って、アンジェリカ」

 彼女が、そして不器用な彼が出す答えを私はまだ知らない。だが私は何があろうともかわいいかわいいアンジェリカを応援するのだ。

 それは私の肩を抱いて、アンジェリカが飛び出して行ったドアを見つめるラウス様も、そして私の腕の中でいい子にしているテディベアも同じことだろう。

 それからお義父様とラウス様を見送った私は今、お義母様と共に薔薇に囲まれた庭でただひたすらにアンジェリカの生還を心待ちにしている。

 物音がする度にアンジェリカが帰ってきたのかと立ち上がる私の腕をお義母様は半ば呆れた様子で引いた。

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