愛より金を選んだ男爵令嬢は人違いで溺愛される
 抱き上げて顔を覗き込むと恥ずかしそうに顔を逸らしてから「ぶにぁ」と返事をした。

 食事を終え、ラウス様の部屋にお邪魔しようとすると当たり前のようにグスタフもやって来て、そして私の足元で丸まる。

「すみません……」
「いや、グスタフは恩人みたいなものだから」

 ラウス様はそう言って、他の4人と同様に彼に愛おしい視線を落とすと今までと変わらずに会話を楽しんだ。

 基本的には大人しいグスタフではあるが、時たまに私の過去の失敗を思い出して「ふん」と鳴くのはご遠慮願いたかった。

「今日はこれくらいにして寝ようか」
「はい」
「おやすみ」

 どうやら今日はしないらしい。髪を撫でられ、少しだけ切なさを覚えた。

 ラウス様と別れ、部屋に帰るとグスタフは身体のお肉を揺らしながらトトトと窓際の花瓶へと距離を詰めた。そして「ぶにぁ」と鳴く。これは何だと聞きたいようだ。

「これね、ラウス様が私をイメージして選んでくださったんだって」

 そう説明すると、そうかと納得したようにおきまりの返事をする。だがその後もグスタフの視線はしっかりと花瓶に向いている。

「あ、倒しちゃダメだからね!」
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