愛より金を選んだ男爵令嬢は人違いで溺愛される
 家紋名鑑よりは軽い彼を抱えたままベッドに入ると、もうすっかり見慣れた天井を見上げながらこれからの身の振り方を考えるのであった。

 朝まで一睡もすることのできなかった私は、同じく起きていてくれたグスタフのお腹をつつきながらやっとのこと絞り出した考えを彼に打ち明ける。

「ねぇ、グスタフ。やっぱり結婚は愛する人とするものだと思うの。だから私の役目は今度こそ終わり」

 私はラウス様を愛している。
 そして出来ることなら彼が本当に愛した女性と結ばれるためのお手伝いをしたいと思う。

 だがそれを実行するには男爵家の娘という身分が有する力はあまりにも弱すぎた。

「だから私はこの場は退かなくっちゃ。帰ったらお父様達怒る……いや悲しむかもしれないけど、一緒に来てくれる?」

 その問いにグスタフはふんと鼻を鳴らしてから私の足元にすり寄った。どうやら前世に引き続き、私の元へとやって来てくれた彼には愚問だったようだ。

「ありがとう」

 それから私は睡眠をとることにした。
 少しだけのつもりがどれだけ気合いを入れて寝ていたのか、起きたのはすっかり日が傾いた頃のこと。

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