愛より金を選んだ男爵令嬢は人違いで溺愛される
 その重みはまるで初恋を失った心を表しているよう。「ありがとうございます」と受け取ったそれを大事に胸に抱えて部屋へと戻った。

 この国の名前を探し出してページの初めからズラリと並んだ家名と家紋に目を通す。

 今回もグスタフは応援係だ。
 私の足の上で丸まりながら、見つかるまでは動くなよ? と精神的と身体的に二重の意味での圧力をかけている。

 指と視線で想像以上に多い家紋の中からやっと探し当てたそれはなんと国内の貴族のものではなかった。隣国の、伯父様が婿養子に行った国の公爵家の家紋だったのだ。

 ミリアール様が下級貴族の娘と言っていたからてっきり同じ下級貴族だと思っていたのだがどうやら違ったらしい。

 異国の、それによりによって公爵家の方ともなると、ラウス様の元へ連れてくることは私の力では出来そうもない。

「はぁ……」

 足の上に乗ったままのグスタフを撫でながら深いため息をついた。

 今日、ラウス様はお帰りにならない。
 だから私とグスタフ、1人と1匹で結論を出す絶好の機会である。

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