愛より金を選んだ男爵令嬢は人違いで溺愛される
 そして残された私はたまたまミリアール様のジュースがかかってしまったラウス様を見つけた。

 私のことは気にするなと言うラウス様の手を半ば強引に引っ張って、途中であった王家の使用人から洗剤を分けてもらうと休憩室に入り込んだ。

 そして乾かすまではラウス様のお話通り。

 だがその話には実は続きがあったのだ。ラウス様の口から語られることのなかった、彼の知らない出来事が。

 ラウス様と別れた後、私達を心配してダイナス様とミリアール様は私のいる休憩室を訪れた。

 そしてラウス様と共に夜会を抜け出した私が、他のご令嬢方に見つからないで無事に夜会から出られるようにと付けてくれたのだ。

「私、借りは作らない主義ですの!」とプリプリと怒りながら「私たちが気を引いている間に早く行きなさい」と私の背を押してくれた。

 あのフリルは刺繍を隠すためのものであり、そして私を守るためのものだったのだ。
 なぜ今さら思い出すのかと寝坊助な記憶に呆れたものだが、今さらで、全てが片付いた後で良かったのではないかとも思う私がいる。

 確かにあの日、私の中で恋が芽生えたのかもしれない。
< 329 / 341 >

この作品をシェア

pagetop