愛より金を選んだ男爵令嬢は人違いで溺愛される
ひどい扱いを受けることなんて覚悟していた。
正直、馬車に乗っている時は生肉にされるために出荷されていく牡牛のような気分だった。
それでも家族や領地の住民が苦しまなくて済むのであれば、私にとっては苦にはならない――そう、覚悟していたはずなのに。
なのに、なぜ私は今こんなところにいるのだろうか?
私の頭上では絵の中の天使様が微笑みを浮かべていて、壁には宝石のようなものが埋め込まれている。それらは様々な角度から照らされる光に反射して輝きを増していた。
私が王都に来たのはたったの二回だけ。
近所のおじさんに頼み込んで、大きな競りに連れてもらった時が一回。
そしてもう一回はお父様すら行くのを嫌がった、半ば強制参加の社交界である。
二度目の王都訪問となった社交場に足を運んだのは私が16になったばかりの頃で、初めて一家揃って夜会に出席した日でもあった。
図らずとも私のデビュタントは王都で行われた上級貴族の主催する夜会となったのであった。