愛より金を選んだ男爵令嬢は人違いで溺愛される
 わざわざ伝えに来てくれたのかと嬉しく思っていると、なぜかラウス様は私に向かって手を差し出した。

「行こうか」
「あ、はい」

 何だろう、この手は?

 とりあえず近所の子どもがおやつ欲しさに伸ばしてくる手とは違うものだということだけはわかる。

 だが肝心のこの手が表す意味がわからない。
 じいっと見つめて答えを探していると、私の手をラウス様は掴んだ。

 手袋をしていたとはいえ、今の今まで土いじりをしていた手はわずかに汚れている。

「ラウス様の手が汚れてしまいます!」
「汚れたら洗えばいいだろ」
「ですが……」
「君がそう教えてくれたんじゃないか。……ほら、行こう。みんな待ってる」

『汚れたら手を洗えばいい』――それは私が先ほど庭師の男たちにいった言葉と同じだった。きっとラウス様は聞いていたのだろう。

 だがよく考えればそれは私が庭師から仕事をもらおうとした時にかけた言葉だ。

 ではラウス様は一体いつからあの場にいたのだろう?
 初めから? だとしたらずっと終わるまで待たせていたことになる。

 私のためなんかに待つ? 
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