愛より金を選んだ男爵令嬢は人違いで溺愛される
「私と結婚してほしい」

 だがおかしいのは私の耳の方ではなかった。

「本気ですか?」
「初めて会ったあの日から君を忘れられなかった……」
「……ラウス様とお会いしたのは一昨日が初めてですよね?」

 おかしいのはラウス様の頭の方だった。
 どうやら仕事のし過ぎで私を誰かと勘違いしているらしい。

 でなければこんなプロポーズまがいのことを、つい一昨日会ったばかりの私なんかにしないはずだ。

 だが勘違いなら、不憫なものだ。
 慣れていらしたようだから『はじめて』という訳ではないのだろうけれど……。

 お可哀想に、と視線を向ければ、ラウス様は突然頭を抱えてしゃがみこんだ。

「具合でも悪いんですか? 私、誰か呼んで来ますから」

 ダイニングルームにならまだ誰かいるだろうと、走り出そうとすると腕を引っ張られた。

「いい。どこも悪くないから」
「ですが……」
「いいから隣にいてくれ」
「! はい。それが私の仕事でしたね」

 ラウス様のことはまだあまりよくわからない。
 知っていることといえば、よく表情が変わるということくらいだろう。

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