愛より金を選んだ男爵令嬢は人違いで溺愛される
 私が傘に意識を取られている一方で、ラウス様は「モリアと遠駆け……」と何やら考え込んでいる様子。どうやら話を続けたのは失敗だったらしい。

 ここで仕事に行きたくないと言われても困る。

「では私は着替えを貸してもらってきますので」

 こんな時は次の話題を振られる前にこの場を立ち去るに限る。
 実は隣だった自室へと逃げこむようにして、扉を背にしゃがみこむ。

 どうして私はこうもダメなんだろう。お姉様達ならもっと自然に話を移せたのだろうに。

 誰かの代わりを務めるならばそれなりにはならなきゃいけないのに、どうも私はラウス様の思う相手の様にはなれそうもない。

 きっとその相手ならさっきの話題だってうまく会話を捌けただろう。
 会ったことないけどきっとそうに違いない。というよりも私と比べれば大抵の人はうまくやれるのだろう。


『仕方ないわね……』
『全くモリアは俺たちがいないと何も出来ないんだから』
『これじゃおちおちお嫁にも出せないな』

 そう長年言われ続け、家族はおろかご近所さんたちにもしょっちゅう世話を焼かれていた。

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